刑事裁判所に提出

《陳述書》死亡20歳女子の姉

飲酒運転車両により卒業式前日に死亡した被害者

意見陳述書

 私の大切な妹がいなくなって,一年が過ぎました。暖かな春がやって来ても私たち遺族の心は暗闇の中をさまよっています。なぜ,妹が死ななくてはいけなかったのか。なぜ,妹が事故の被害者にならなければいけなかったのか。妹を想い,妹の無念さを想い,そして,何より妹にもう二度と会えないという苦しみと私たちは戦っています。

  私の妹は,明るく,そして,とても心の優しい子でした。笑顔が耐えず,いつも笑っていて,そんな妹の周りにはたくさんの友だちがいました。妹の話す話や妹の話題で私たち家族はいつも笑っていられたのです。妹は母や私にとってかけがえのない,かけてはならない存在なのです。

  妹の亡くなった翌日,3月14日は,妹が二年間通った「理容美容専門学校」の卒業式でした。二年間,学業に専念し,毎日楽しく通っていた専門学校の卒業式を妹は何より楽しみにしていたようです。妹が亡くなったという凶報をうけ,私は,妹の卒業証書をこの手で受け取り,直接,妹へ渡してあげたいと強く思いました。そして,妹の代わりに卒業式に出席しました。

  卒業生のほとんどが,その当日に妹の死を聞かされたため,驚きと涙で,門出を祝う卒業式とはかけ離れたものでした。妹の名前が呼ばれた時に,会場はすすり泣きと悲しみの渦でいっぱいになりました。精一杯の力で,私は,返事をし,壇上に上がり,妹の代わりに卒業証書を受け取りました。そして,冷たくなった妹の手に直接,渡しました。自分の手で受け取るはずの卒業証書を。第二の人生を歩むはずの妹に,卒業式と同日に行われたお通夜の日に,就職の合格通知が,3月31日には,美容師の国家試験の合格通知が届きました。どんなに妹は喜んだことでしょう。合格通知を自分の手に取り,「やったー」と喜ぶ妹の姿が目に浮かびます。

  なぜ,妹は死んでしまったのか。私たち遺族は,事故の事実を葬儀の直前に新聞で初めて知りました。カーブにもかかわらず,追い越しをかけた加害者車両と妹の乗った車が正面衝突したと。苦しかったです。悲しかったです。怒りと共に何も悪くなかった妹が,どうして,と心が破れてしまいそうでした。

  加害者の身内が,謝罪に来ましたが,その内容は,言い訳や,時には,自分勝手な言い分であり,謝罪をしにきているとは思えないほどでした。遺族の気持ちも考えないような言動や行動は,謝罪とは言えません。私たちがどんな苦しみを背負っているのか分かるはずもないけれど,私は,許しがたいものだと思います。

  卒業式の準備を楽しみに,家に向かう途中,前から大きな車が自分の目の前に飛び出してくる。どんなに怖く,どんなに痛かったでしょう。雪の降る寒い中で,息絶えながらも必死に生きようとしていた,そして,あんなにひどい状態でありながら,事故発生から5時間も妹はがんばりました。妹の痛さや苦しさを思うと,妹の悲しさや無念さを思うと,くやしくて,苦しくて,言葉が出てきません。あの日,加害者が,無謀な運転さえしていなければ,カーブなのに追い越しさえしていなければ,妹は,生きていました。妹は,今,美容師になるという夢を叶え,第二の人生を桜花していたはずです。

  返してください。私の最愛の妹を返してください。母の言葉,妹を抱きしめながら,言った言葉,「私の娘を取らないで。奪わないで。」母のあの声,必死に妹を取られないように,棺にしがみつき,泣きわめいている母の姿,決して,忘れられません。

  母や私,そして何より妹の人生をめちゃくちゃにした加害者を,私は,絶対に許しません。急いでいたからといって,スピードを出し,追い越し禁止区間で追い越しをかけ,関係のない人の命を奪った加害者を決して許しません。更に,加害者が飲酒をしていたという事実を後に知りました。こんな事があっていいのでしょうか。私は,妹を奪った加害者を,絶対に許すことはできません。絶対に。

  妹の生きた二十年間,これから生きていくはずの妹の人生,奪われた命の大きさ,どんな代償もありません。防ぎようのあったこの交通事故は,加害者の無謀飲酒運転によって引き起こされました。償いきれない罪を償うためにも,加害者を実刑に処してください。妹の奪われてしまった短い人生の代償があるならば,執行猶予をつけず,加害者を実刑に処してください。私の嘆願です。妹のために,どうか,正しい判断をお願い致します。

​以上

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